

Yahoo!ショッピングのセールで『TP-Link BE9300(Deco BE65)2台セット』が78,000円のところ50%OFFクーポンが期間限定であったので、WiFiルーターが古くなったこととメッシュWiFiを2階建て木造住宅に適応させるために2台セットでこの価格だったので衝動買いしてしまいました。

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まぁいわく付きのTP-Linkという点があるので、あえておすすめとは言い切りませんが、性能を考えると良い買い物だったと自負しています。

製品紹介
インターネットは私たちの生活に不可欠なものとなり、その快適さを左右するのがWi-Fi環境です。近年、スマートフォン、パソコン、タブレットに加え、スマート家電やIoTデバイスが急速に普及し、家庭内でWi-Fiに接続される機器の数は増え続けています。同時に、4K/8K動画のストリーミング、オンラインゲーム、大容量ファイルの送受信といった高帯域幅を必要とするコンテンツも一般的になり、従来のWi-Fi規格では力不足を感じる場面も少なくありません。
このような背景のもと、次世代のWi-Fi規格「Wi-Fi 7 (IEEE 802.11be)」が大きな注目を集めています。Wi-Fi 7は、単に通信速度が向上するだけでなく、遅延の低減、接続の安定性向上など、多くの革新的な技術を搭載しており、私たちのオンライン体験を根本から変える可能性を秘めています。これにより、リモートワークやオンライン学習はよりスムーズに、高画質のエンターテイメントは途切れることなく、そして多数のスマートホームデバイスはより確実に連携して動作する未来が期待されます。
TP-Link社の「Deco BE9300」(一部ではDeco BE65とも呼ばれます)は、この最新規格Wi-Fi 7に対応したメッシュWi-Fiシステムです。TP-Linkは、ネットワーク機器市場で高いシェアを誇り、その中でもDecoシリーズは、簡単なセットアップと広範囲なカバレッジで人気を集めています。このDeco BE9300が、Wi-Fi 7時代の新たなスタンダードとなり得るのか、その実力を徹底的にレビューしていきます。
製品名を整理しておくと、日本市場においては、本記事で主に取り上げるのは「Deco BE9300」という名称で販売されている、トライバンドBE9300(6GHz: 5764Mbps + 5GHz: 2882Mbps + 2.4GHz: 688Mbps)、2.5Gbpsポートを4基搭載したモデルです。一方で、「Deco BE65」という名称は、海外市場では異なるスペックのモデル(例えば、BE11000クラス)を指す場合や、一部の販売店でこのBE9300スペックのモデルを指して使われるケース があります。このような名称の揺れは、グローバルに製品を展開するメーカーの地域ごとのブランディング戦略や、流通チャネルによる命名の違いを反映している可能性があり、消費者が製品情報を比較検討する上で混乱を招くこともあります。本記事では「Deco BE9300」として解説を進めます。
ここが凄い!Wi-Fi 7の注目技術とDeco BE9300 (Deco BE65) がもたらす「真の恩恵」


Wi-Fi 7は、単なる速度向上に留まらない、数々の革新的な技術を搭載しています。これらの技術が組み合わさることで、これまでのWi-Fiとは一線を画す、まさに「次世代」と呼ぶにふさわしい通信体験が実現します。Deco BE9300 (Deco BE65) は、これらの最新技術を余すところなく活用し、ユーザーに具体的な「恩恵」として提供します。
MLO(マルチリンクオペレーション)
Wi-Fi 7の目玉機能の一つがMLO(Multi-Link Operation)です。これは、従来のWi-Fiが2.4GHz、5GHz、6GHzのいずれか一つの周波数帯(バンド)しか同時に利用できなかったのに対し、複数のバンドを束ねて同時に通信できるようにする技術です。
例えるなら、これまで1車線しかなかった道路が、MLOによって複数車線の高速道路になるようなイメージです。しかも、単に車線が増えるだけでなく、通信状況に応じて最適な車線を賢く使い分けることで、スループット(実効速度)の大幅な向上、遅延の劇的な低減、そして接続の信頼性向上を実現します。特に、電波が混み合いがちな環境や、多数のデバイスが同時に通信するような状況で、その真価を発揮します。
320MHzチャネル幅の衝撃
Wi-Fi 6/6Eでは最大160MHzだったチャネル幅(データの通り道の幅)が、Wi-Fi 7では、特にクリーンな電波環境が期待できる6GHz帯において、その2倍の320MHzまで拡張されました。
これは、データの通り道そのものが2倍に広がることを意味し、一度に伝送できるデータ量が格段に増加します。これにより、理論上の最大通信速度が飛躍的に向上し、大容量データのダウンロードやアップロードがこれまで以上に高速になります。
4K-QAM(4096-QAM)の威力
QAM(直交振幅変調)は、電波に情報を乗せるための変調方式の一つです。Wi-Fi 6/6Eで採用されていた1024-QAMに対し、Wi-Fi 7では4K-QAM(4096-QAM)に対応しました。
これは、一度に運べる「荷物(データ)の量」が約20%増加することを意味します。より多くの情報を一度の電波で伝送できるため、通信効率が向上し、実効速度の向上に貢献します。
Multi-RUとプリアンブルパンクチャリング
Multi-RU(マルチリソースユニット)は、限られた周波数帯域をより多くのユーザーやデバイスで効率的に分割利用するための技術です。また、プリアンブルパンクチャリングは、電波干渉があるチャネルの一部を「パンクチャリング(穴あけ)」して回避し、残りのクリーンな部分を有効活用することで、通信の安定性を高める技術です。これらの技術により、特に多数のデバイスが密集するような環境でも、各デバイスが安定して通信できるようになります。
これらのWi-Fi 7の主要技術は、それぞれが単独でも強力ですが、真価はそれらが相乗効果を生む点にあります。MLOが複数の帯域を束ね、320MHzが帯域幅を広げ、4K-QAMが密度を高める。これらが同時に機能することで、単に一つの要素が改善されるよりもはるかに大きなインパクトが生まれます。それは、まるで広い道(320MHz)を多くの車線(MLO)で、より多くの荷物を積んだトラック(4K-QAM)が効率的に(Multi-RU、プリアンブルパンクチャリング)走るようなもので、総合的な「輸送能力」が格段に向上するのです。これは、単なるスペックシート上の数値競争ではなく、ユーザー体験の質的な変化をもたらします。
これらの技術が組み合わさることで実現する体験
- オンラインゲーム: MLOや320MHzチャネル幅による低遅延と高スループットは、一瞬のラグも許されないオンラインゲームにおいて、かつてないほど快適なプレイ環境を提供します。Ping値の改善も期待できます。
- 8K/4K動画ストリーミング: 大容量の動画データもスムーズに伝送できるため、バッファリングによる再生の中断といったストレスから解放され、高精細な映像コンテンツを存分に楽しめます。
- 多数のスマートホームデバイス接続: スマートスピーカー、照明、エアコン、セキュリティカメラなど、多数のIoTデバイスが同時に接続されても、ネットワーク全体の安定性が保たれ、各デバイスのレスポンスも向上します。
- 大容量ファイルのダウンロード・アップロード: 数GBにも及ぶ大容量ファイルの送受信にかかる時間が大幅に短縮され、作業効率が向上します。
ただし、Wi-Fi 7の恩恵を最大限に享受するには、ルーターだけでなく、スマートフォンやPCなどのクライアントデバイス側もWi-Fi 7に対応している必要があります。しかし、Deco BE9300のようなメッシュWi-Fiシステムの場合、たとえクライアントデバイスがWi-Fi 7に未対応であっても、ユニット(親機・子機)間のバックホール通信にWi-Fi 7の技術(特にMLO)が活用されることで、ネットワーク全体の安定性向上や通信範囲の拡大といった間接的な恩恵を受けることが期待できます。これは、新技術への過渡期において、ルーター導入のハードルを下げる重要なポイントと言えるでしょう。
TP-Link Deco BE9300 (Deco BE65) 詳細スペックレビュー
ここでは、TP-Link Deco BE9300 (Deco BE65) の製品としての具体的な特徴や技術仕様を詳しく見ていきます。スペックシート上の数値だけでなく、それが実際の利用シーンでどのような意味を持つのかを解説します。
デザインチェック
まず、パッケージ内容ですが、Deco BE9300のユニット本体(1パックまたは2パック)、各ユニット用の電源アダプター、LANケーブル、そして「かんたん設定ガイド」などが同梱されています。
本体デザインは、従来のDecoシリーズの多くを踏襲した、シンプルで洗練された円筒形です。カラーは清潔感のあるホワイトで、どのようなインテリアにも比較的馴染みやすいでしょう。アンテナは内蔵型なので、外観もスッキリしています。
サイズについては、Wi-Fi 7対応の高性能ルーターとしては比較的コンパクトであるとの評価もあります。例えば、あるレビューでは「Deco BE65はBE22000(より上位のモデルと推測)の半分ほどの大きさでコンパクト」と言及されています。とはいえ、従来の小型ルーターと比較すると、ある程度の存在感はあるかもしれません。設置場所を選ぶ際には、寸法(後述のスペック表参照)を確認しておくと良いでしょう。重量感についても、安定した設置には十分な重さがあると考えられます。

ポート類は本体背面に配置されており、スッキリとした配線が可能です。

TP-Link Deco BE9300 (Deco BE65) 主要スペック一覧
項目 | 仕様 |
Wi-Fi規格 | Wi-Fi 7 (IEEE 802.11be/ax/ac/n/a/g/b) |
BE値/合計最大速度 | BE9300 / 最大9.3Gbps (9214Mbps) |
各バンドの速度 | 6GHz: 5764Mbps (802.11be)<br>5GHz: 2882Mbps (802.11be)<br>2.4GHz: 688Mbps (802.11be) |
CPU | 高性能CPU (詳細は非公開) |
メモリ | 非公開 |
アンテナ | 高性能内蔵アンテナ ×4 (各ユニット) |
有線ポート | 2.5Gbps WAN/LAN自動認識ポート ×4 (各ユニット) |
USBポート | USB 3.0 ×1 (FTPサーバー, メディアサーバー, Sambaサーバー対応) |
MLO対応 | ○ |
320MHzチャネル対応 | ○ (6GHz帯のみ) |
4K-QAM対応 | ○ |
OFDMA対応 | ○ |
MU-MIMO対応 | ○ (2×2 MU-MIMO) |
AIメッシュ技術 | ○ (シームレスローミング, アダプティブルーティング, 自己修復, IoTメッシュ等) |
最大接続推奨台数 | 200台以上 |
寸法 (幅×奥行き×高さ) | 108 × 108 × 180 mm (1ユニットあたり、日本公式ページに具体的な記載がないため類似モデルや海外情報を参考に推定) |
重量 | 非公開 (1ユニットあたり) |
動作モード | ルーターモード, ブリッジモード(アクセスポイントモード) |
セキュリティ | WPA3, SPIファイアウォール, アクセスコントロール |
HomeShield対応 | ○ (無料Basicプラン, 有料Proプラン) |
パッケージ内容 (2パック時) | Deco BE9300ユニット ×2, LANケーブル ×1, 電源アダプター ×2, かんたん設定ガイド |
保証期間 (日本国内) | 3年間 |
各機能の深掘り
- 全ポート2.5Gbpsの衝撃: Deco BE9300の大きな特徴の一つは、搭載されている4つの有線LANポートが全て最大2.5Gbpsに対応し、かつWAN/LAN自動認識機能を備えている点です。これは、1Gbpsを超える高速な光回線(例:2.5Gbps、5Gbps、10Gbpsプラン)を利用しているユーザーにとって、そのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な要素となります。また、NAS(ネットワーク接続ストレージ)やゲーミングPCなど、高速な有線接続を必要とする複数のデバイスを同時に接続しても、ルーターがボトルネックになることを防ぎます。多くのルーターがWANポートのみマルチギガ対応であったり、LANポートが1つだけマルチギガ対応である中で、全ポート2.5Gbps対応は、家庭内LAN環境全体のボトルネック解消と将来性の確保という点で大きな意味を持ちます。将来的に2.5Gbps以上のインターネット回線がさらに普及した際にも対応できるため、長期的な視点での投資価値を高める要素と言えるでしょう。
- USB 3.0ポートの活用法: 本体にはUSB 3.0ポートが1基搭載されており、外付けHDDなどを接続することで、FTPサーバー、メディアサーバー、Sambaサーバーとして機能させることができます。これにより、家庭内ネットワーク上で手軽にファイル共有を行ったり、動画や音楽などのメディアコンテンツをストリーミング再生したりすることが可能になります。簡易的なNAS(ネットワーク接続ストレージ)としての利用が期待できますが、本格的な専用NASと比較すると、転送速度や同時アクセス性能、RAID機能やスナップショットといった高度な機能面では限界があることを理解しておく必要があります。あくまで「あると便利」な機能であり、過度な期待は禁物ですが、ライトユーザーにとっては十分な価値を提供するでしょう。
- AI駆動メッシュ: TP-Link独自のAIメッシュ技術は、Deco BE9300の大きな強みです。この技術は、各家庭のネットワーク環境や利用状況を学習し、Wi-Fiカバレッジ、接続デバイスの分散、バックホール経路などを自動的に最適化します。例えば、AIシームレスローミング機能により、家の中を移動しても最適なDecoユニットへ途切れることなくスムーズに接続が切り替わります。また、電波状況の変化に応じて最適な通信経路を選択するアダプティブルーティングや、一部のユニットに問題が発生した場合に自己修復する機能なども備えており、常に安定したWi-Fi環境を維持するのに貢献します。
- ワイヤレスと有線の複合バックホール: Deco BE9300は、ユニット間のデータ伝送路であるバックホールとして、Wi-Fi(無線)だけでなく有線LANも利用できます。さらに、TP-Linkの独自技術により、ワイヤレスバックホールと有線バックホールを同時に接続し、連携させることが可能です。これにより、ネットワーク全体のスループットが向上し、遅延が低減され、より広範囲で安定した信頼性の高いメッシュ接続が実現します。特に、Wi-Fi 7のMLO技術がバックホール通信にも活用されることで、その効果はさらに高まると期待されます。

Deco BE9300 (Deco BE65) の速度・カバレッジ・安定性
スペックシート上の数値がいかに優れていても、実際の使用環境でその性能が発揮されなければ意味がありません。ここでは、Deco BE9300 (Deco BE65) が実環境でどれほどのパフォーマンスを見せるのか、速度、カバレッジ、安定性の観点から検証していきます。(注:以下のテスト結果は、一般的な戸建て住宅環境や公開されているレビュー情報を基に想定したものです。)

通信速度測定結果
Wi-Fiルーターの性能を最も分かりやすく示す指標の一つが通信速度です。テスト環境として、一般的な木造2階建て住宅(約120㎡)、インターネット回線は1Gbps光回線、測定デバイスはWi-Fi 6対応のノートPCおよびスマートフォンを想定します。
- 近距離(ルーターと同じ部屋): ルーターから数メートルの距離では、下り800Mbps~900Mbps、上りも同程度の非常に高速な通信が期待できます。あるレビューサイトでは、Deco BE65(BE11000モデル)で近距離最大681.55Mbps、別のレビューではDeco BE9300(Archer BE550のメッシュ版と想定されるモデル)で最大867.08Mbpsを記録したとの報告があります。これらの数値を考慮すると、1Gbps回線のポテンシャルを十分に引き出せるでしょう。
- 中距離(壁1枚隔てた隣室): 壁などの障害物があっても、500Mbps~700Mbps程度の速度維持が期待でき、快適なブラウジングや動画視聴が可能です。
- 遠距離(2階の最も遠い部屋): メッシュWi-Fiの真価が問われる遠距離でも、200Mbps~400Mbps程度の安定した速度が見込めます。前述のレビュー では、戸建て3階でも300Mbps以上を維持したとされており、家全体で高速通信を実現できる可能性が高いです。
- 有線LAN接続(2.5Gbpsポート使用時): 2.5Gbps対応のPCやNASを接続した場合、契約回線が1Gbpsであればその上限に近い速度、2.5Gbps以上の回線であればさらに高速な通信が可能です。
- メッシュ環境下での子機経由の速度: 子機経由でも、親機とのバックホール通信が強力であれば、親機に近い速度を維持できます。Wi-Fi 7のMLO技術がバックホールに活用されることで、この性能はさらに向上すると考えられます。ユーザーレビューでも、離れた部屋でも親機と同程度の速度が出たとの報告があります。


カバレッジ性能
「家じゅうどこでも繋がる」というメッシュWi-Fiの謳い文句は、Deco BE9300でも健在です。TP-Link独自のメッシュ技術に加え、BSS Coloring(電波干渉を低減する技術)やビームフォーミング(特定のデバイスに電波を集中させる技術)といった機能により、Wi-Fiのデッドゾーン(電波の届かない場所)を効果的に解消します。
公称値としては、Deco BE65(BE11000、3パック)で最大725㎡、Deco BE9300(2パック)で最大538㎡をカバーするとされています。日本の一般的な住宅であれば、2パックモデルでも十分なカバレッジが期待できるでしょう。


オンラインゲームでの快適性
オンラインゲームでは、通信速度以上にPing値(応答速度)や遅延(レイテンシー)の少なさが重要になります。Wi-Fi 7は、MLOや320MHzチャネル幅といった技術により、これらの低遅延性能が大幅に向上しています。
Deco BE9300には、特定のデバイスの通信を優先するQoS(Quality of Service)機能も搭載されており、これをゲーミングPCやコンソールに設定することで、他の通信の影響を受けにくくし、より安定したゲームプレイが可能になります。ユーザーレビューでも「安定している」「途中で切れることがない」といった評価が見られます。
多数のスマートホームデバイス接続時の安定性
現代の家庭では、PCやスマートフォン以外にも、スマートスピーカー、スマート照明、センサー類など、多数のIoTデバイスが常時Wi-Fiに接続されています。Deco BE9300は、最大200台以上のデバイス接続に対応すると謳っており、多数のデバイスが同時接続された状態でも安定した通信を提供することを目指しています。
Wi-Fi 7のMLOやOFDMAといった技術は、まさにこのような多デバイス環境での通信効率を高めるために設計されており、各デバイスがスムーズに連携し、快適なスマートホーム体験を支えます。

MLOの効果は体感できるか?ユーザーの声
Wi-Fi 7の目玉機能であるMLOですが、その効果を最大限に享受するには、接続するクライアントデバイス側もMLOに対応している必要があります。現状ではMLO対応デバイスはまだ少ないため、「MLOの恩恵を実感できない」という声もあります。
しかし、前述の通り、メッシュWi-Fiシステムにおいては、ユニット間のバックホール通信にMLOが活用されることで、ネットワーク全体の安定性や速度が向上するという間接的なメリットが期待できます。実際に、「MLOがちゃんと使えて、実質的に6GHz帯に近い感じで安定している」といった肯定的なユーザーレビューも見られます。現時点では、MLO対応クライアントの普及待ちという側面は否めませんが、将来性への投資、あるいはメッシュバックホールの強化という点では、十分に価値があると言えるでしょう。
Wi-Fi 7ルーターの性能評価においては、単一クライアントでの最大瞬間速度だけでなく、このように複数のデバイスが同時接続された際の安定性や、メッシュ環境下でのバックホール性能といった「システム全体としての性能」がより重要になります。Deco BE9300は、これらの点で強みを発揮するように設計されていると言えます。
また、新しい無線規格やチップセットを搭載した製品の初期段階では、ファームウェアの成熟度やクライアント側の対応状況により、一部で不安定さや期待したほどの速度が出ないといった報告が見られることがあります。これは「アーリーアダプタータックス」とも呼ばれる現象で、多くの場合、メーカーによるファームウェアアップデートや、クライアントデバイスの対応が進むにつれて時間とともに改善されていく傾向にあります。
簡単セットアップ!Decoアプリによる初期設定と管理機能

高機能なWi-Fiルーターであっても、設定が複雑で難解では、その性能を十分に活かすことができません。TP-LinkのDecoシリーズは、専用スマートフォンアプリ「Decoアプリ」による簡単なセットアップと直感的な管理機能で定評があります。Deco BE9300 (Deco BE65) もその例に漏れず、初心者でも比較的スムーズに導入できるよう配慮されています。
誰でも簡単!3ステップセットアップ
Deco BE9300の初期設定は、驚くほどシンプルです。
- アプリの準備と接続: まず、App StoreまたはGoogle Playから「TP-Link Deco」アプリをスマートフォンにダウンロードし、インストールします。アプリを起動し、TP-Link IDでログインします。IDがない場合は、画面の指示に従って新規登録(サインアップ)を行います。次に、Decoユニットの1台目(メインDeco)を箱から取り出し、付属のLANケーブルでご自宅のモデム(またはONU)に接続し、電源アダプターを接続して電源を入れます。
- アプリによる検出と設定: Decoアプリの指示に従い、DecoユニットのLEDランプの状態を確認しながら設定を進めます。通常、LEDが青く点滅し始めると、アプリがDecoを検出し、接続設定の準備が整います。アプリ上でWi-Fiネットワーク名(SSID)とパスワードを設定すれば、基本的なセットアップは完了です。
- ユニットの追加(メッシュ構築): 2パック以上のモデルを使用する場合は、同様の手順で2台目以降のDecoユニットを設置し、アプリから追加設定を行います。1台目の設定が完了していれば、2台目以降は比較的自動的に同期され、メッシュネットワークが構築されます。
一部のユーザーレビューでは「初期設定に手間取った」という声も見られますが、基本的にはアプリの画面指示に従って操作すれば、専門的な知識がなくても数分~十数分程度で設定が完了するでしょう。
Decoアプリの機能と使い勝手レビュー
Decoアプリは、単に初期設定を簡単にするだけでなく、日々のネットワーク管理を快適に行うための多彩な機能を提供しています。
- ダッシュボード(概要画面): アプリを起動すると表示されるメイン画面で、現在のインターネット接続状況、接続されているデバイスの数、リアルタイムの通信速度などを一目で確認できます。
- ネットワーク管理: Wi-Fi設定(SSIDやパスワードの変更)、ゲストネットワークの作成・管理、メインDecoユニットの切り替え、新たなDecoユニットの追加や既存ユニットの削除・再起動といった操作が可能です。
- クライアント管理: 現在ネットワークに接続されているスマートフォン、PC、IoTデバイスなどの一覧を確認できます。各デバイスの現在の通信量、接続しているDecoユニット、IPアドレスといった詳細情報の表示に加え、特定のデバイスのインターネット接続を一時的に停止したり、通信優先度を設定したり、プロファイルを割り当てたりすることも可能です。
- QoS(Quality of Service): 特定のデバイスやアプリケーション(オンラインゲーム、ビデオストリーミングなど)の通信を優先させることで、ネットワークが混雑している状況でも快適な利用をサポートします。デバイスごとの優先度設定や、利用シーンに応じた最適化が可能です。
- 保護者による制限: お子様のインターネット利用を適切に管理するための機能です。詳細は後述のHomeShieldのセクションで解説します。
- HomeShieldセキュリティ設定: ネットワーク全体のセキュリティを強化するための機能です。こちらも詳細は後述します。
- ネットワーク最適化機能、Wi-Fi干渉テスト、スピードテスト機能: Decoアプリには、現在のWi-Fi環境を分析し、最適な状態に調整するためのツールや、インターネット回線の速度を測定する機能も搭載されています。
- アプリのUIと操作性: 一般的に、Decoアプリのユーザーインターフェースは直感的で分かりやすいと評価されています。多くのユーザーレビューで「Decoアプリは優秀」との声が上がっています。一方で、ごく一部のユーザーからは「Decoはアプリに頼りすぎで、そのアプリが平凡」といった厳しい意見も見られます。これは、アプリのシンプルさゆえに、非常に細かいネットワーク設定(特定のWi-Fiチャンネルへの手動固定など)を求めるパワーユーザーにとっては物足りなさを感じる場合があることを示唆しています。Decoシリーズは「簡単さ」を重視し、複雑な設定項目を意図的に隠蔽または排除しているため、このアプローチは大多数のユーザーには受け入れられるものの、一部の熟練ユーザーからは不満が出る可能性がある点は留意すべきでしょう。
- リモート管理機能: 外出先からでも自宅のネットワーク状態を確認したり、一部の設定を変更したりすることが可能です。
Decoアプリの利用にはTP-Link IDの作成とログインが必須となります。これは、設定情報の一部がクラウドに保存されたり、リモートアクセス機能を提供したりするためと考えられます。利便性は高い一方で、ユーザーはメーカーのプラットフォームにある程度依存する形になるため、プライバシーポリシーの確認や、万が一サービス内容が変更されたり終了したりした場合の影響なども、長期的な視点では考慮に入れておく必要があるかもしれません。
セキュリティ対策:TP-Link HomeShieldの無料・有料プラン徹底比較
インターネットの利便性が高まる一方で、サイバー攻撃やマルウェア、不正アクセスといった脅威も巧妙化・多様化しています。家庭内ネットワークのセキュリティ対策は、もはや他人事ではありません。TP-Link Deco BE9300 (Deco BE65) には、家庭のネットワークと接続デバイスを保護するための包括的なセキュリティソリューション「HomeShield」が搭載されています。

HomeShieldは、主に以下の3つの保護レイヤーを提供します。
- ネットワーク保護: ルーターレベルで外部からの脅威を検知・ブロックし、ネットワーク全体を保護します。
- 保護者による制限(ペアレンタルコントロール): お子様の安全なインターネット利用をサポートします。
- IoT保護: セキュリティが脆弱になりがちなスマートホームデバイスを保護します。
HomeShieldには、無料で利用できるBasicプランと、より高度な機能を提供する有料のProプラン(Security+などを含む)があります。日本市場向けの各プランの主な機能は以下の通りです。
TP-Link HomeShield 無料プラン vs 有料プラン 機能比較(日本版)
機能カテゴリ | 主な機能 | 無料 (Basic) | 有料 (Pro: Security+, 総合セキュリティ, 保護者による制限総合パック等) |
ネットワークセキュリティ | ルーターセキュリティスキャン、ワイヤレスセキュリティスキャン、IoTデバイス識別、Wi-Fiアクセスコントロール、カメラセキュリティ、デバイス隔離 | ○ | |
リアルタイムIoTプロテクション、悪意のあるサイトブロック、侵入防止システム、DDoS攻撃の防止、ホームネットワークスキャナー | △ | ○ | |
デバイスアンチウイルス (PC/スマホ向け、総合セキュリティパッケージに内包) | × | ○ | |
保護者による制限 | プロファイル作成、年齢テンプレート設定、インターネット一時停止、コンテンツフィルター(URL別)、特定ウェブサイトブロック、就寝時間、インサイト | ○ | |
柔軟な就寝時間、時間制限、オフタイム、時間報酬、家族の時間、ブロックされたアプリ、アプリの時間制限、常に許可されたアプリ、セーフサーチ、YouTube制限、包括的なインサイト | × | ○ | |
KidShieldアプリ (位置情報追跡など、保護者による制限総合パックに内包) | × | ○ | |
QoS | デバイス優先、シーン優先 | ○ | ○ |
レポート機能 | ネットワークセキュリティ統計、エンドデバイス統計、インターネット利用概要、オンライン時間分析、ブラウザ履歴分析 | ○ | ○ |
- △:一部機能限定または通知のみなど
- Proプランの具体的な名称や内包される機能はパッケージによって異なる場合があります。
無料プランでできること・できないこと
無料のBasicプランでも、ネットワーク内のデバイスをスキャンして潜在的なリスクを警告したり、基本的なペアレンタルコントロール(ウェブサイトのブロックや利用時間の確認など)を利用したりすることが可能です。しかし、リアルタイムでの脅威ブロック(侵入防止システムなど)や、より詳細なペアレンタルコントロール(アプリごとの利用時間制限や不適切コンテンツの自動フィルタリングなど)といった高度な機能は、有料プランの範疇となります。
有料プラン(Security+, 総合セキュリティパッケージ, 保護者による制限総合パック)の具体的な機能とメリット
有料プランにアップグレードすることで、以下のような強力な保護機能が利用可能になります。
- 高度なネットワーク保護: 悪意のあるウェブサイトへのアクセスをブロックしたり、外部からの不正侵入の試みを検知・防御したり、IoTデバイスを標的とした攻撃から保護したりする機能が強化されます。
- 詳細なペアレンタルコントロール: お子様ごとにプロファイルを作成し、年齢に応じたコンテンツフィルタリング、アプリごとの利用時間制限、オンライン時間の報酬設定、不適切なYouTubeコンテンツの制限、セーフサーチの強制などが可能になります。さらに、KidShieldアプリを利用すれば、お子様のスマートフォンの位置情報を追跡したり、特定のエリアへの出入りを通知したりする機能も利用できます(別途パッケージ加入が必要な場合あり)。
- デバイスアンチウイルス: 一部の有料パッケージには、PCやスマートフォン向けのアンチウイルス機能が含まれており、マルウェア感染からデバイスを保護します。
料金体系とサブスクリプション
HomeShieldの有料機能(Security+など)は、多くの場合、30日間の無料トライアル期間が提供されています。トライアル期間終了後も継続して利用するには、月額または年額のサブスクリプション契約が必要になります。具体的な料金については、TP-Linkの公式サイトやDecoアプリ内で確認する必要がありますが、「国や地域によって異なる場合がある」との注記があるため、日本国内での正確な料金プランを確認することが重要です。
有料プランに加入する価値があるかどうかは、ユーザーの利用状況やセキュリティに対する意識の高さによって異なります。基本的な保護で十分と考えるユーザーもいれば、より包括的なセキュリティや詳細なペアレンタルコントロールを求めるユーザーもいるでしょう。HomeShieldの無料プランは基本的な保護を提供しますが、今日の高度化・多様化する脅威に対して万全とは言えません。より安心してインターネットを利用したい、あるいは子供のネット利用を細かく管理したいと考えるユーザーにとっては、有料プランへの加入が実質的に必要となり、これはルーター本体価格に加えた「ランニングコスト」として考慮すべき点です。
HomeShieldのようなルーター組み込み型の統合セキュリティサービスは、個別にセキュリティソフトやペアレンタルコントロールアプリを導入・管理する手間を省けるという大きなメリットがあります。一方で、機能のカスタマイズ性や特定の脅威に対する専門性においては、専用のセキュリティソフトやペアレンタルコントロールアプリに劣る場合があることも理解しておく必要があります。例えば、アンチウイルス機能の検出率や、ペアレンタルコントロールのフィルタリング精度などが、専門ソフトと比較してどうなのか、といった点です。
特に注目すべきは、IoTデバイスのセキュリティ保護機能です。スマートホーム化が進む現代において、セキュリティが脆弱なIoTデバイスはサイバー攻撃の格好の標的となり得ます。ルーターレベルでこれらのデバイスを保護するHomeShieldの機能は非常に価値が高いと言えますが、その実効性(具体的にどのような脅威をどの程度検知・防御できるのか)については、より詳細な情報や第三者機関による評価が待たれるところです。

Deco BE9300 (Deco BE65) のメリット・デメリットまとめ
これまでのレビュー内容を踏まえ、TP-Link Deco BE9300 (Deco BE65) の主なメリットとデメリットを整理してみましょう。購入を検討する際の判断材料としてください。
メリット
- 圧倒的なWi-Fi 7パフォーマンス: 最新のWi-Fi 7規格に対応し、MLO、320MHzチャネル幅、4K-QAMといった技術により、これまでにない超高速通信、低遅延、そして安定した接続環境を実現します。
- 全ポート2.5Gbps搭載: 4つ全ての有線LANポートが最大2.5Gbpsに対応し、WAN/LAN自動認識機能を備えているため、高速なインターネット回線やNAS、ゲーミングPCなどの性能を最大限に引き出し、将来的なネットワーク環境の変化にも対応できます。
- 簡単なセットアップと直感的なDecoアプリ: 専用のスマートフォンアプリ「Decoアプリ」を使えば、初心者でも画面の指示に従うだけで簡単に初期設定が行え、日々のネットワーク管理も直感的に操作できます。
- 広範囲をカバーするメッシュWi-Fi: 複数のDecoユニットを連携させることで、家の隅々まで強力なWi-Fiネットワークを構築し、電波の届きにくいデッドゾーンを解消します。
- 充実したアプリ機能: ネットワーク状態の監視、接続デバイスの管理、QoS(通信優先度設定)、保護者による制限(一部有料)など、多彩な管理機能がアプリ一つで利用可能です。
- AIによるネットワーク最適化: TP-Link独自のAIメッシュ技術が、各家庭のネットワーク環境や利用状況を学習し、常に最適なWi-Fi接続を提供するよう自動的に調整します。
- USB 3.0ポート搭載: 外付けストレージを接続することで、簡易的なファイル共有サーバーやメディアサーバーとして活用できます。
- 3年間の長期保証(日本国内): TP-LinkのDecoシリーズは、日本国内において通常3年間の製品保証が付帯しており、万が一の際にも安心です。
デメリット
- 価格: 最新のWi-Fi 7に対応したハイエンドモデルであるため、従来のWi-Fi 6/6Eルーターと比較して価格は高めです。
- 本体サイズ: 従来のDecoシリーズと比較してコンパクトになったという評価もありますが、それでも高性能なアンテナや冷却機構を内蔵しているため、設置場所によってはある程度のスペースを必要とし、存在感があるかもしれません。
- 初期ファームウェアの安定性リスク: 新しい技術やチップセットを搭載した製品は、発売初期のファームウェアが不安定な場合があります。これはDeco BE9300に限った話ではありませんが、過去の他社製品の例や一部のアーリーアダプターのレビュー からも、初期ロットでは予期せぬ動作をする可能性もゼロではないと推測されます。ファームウェアのアップデートによって改善されることが期待されます。
- アプリでの詳細設定の限界: Decoアプリは使いやすさを重視している反面、非常に細かいネットワーク設定(特定のWi-Fiチャンネルへの手動固定など)を求めるパワーユーザーにとっては、設定項目が物足りないと感じる可能性があります。
- HomeShieldの全機能利用は有料: ネットワーク保護やペアレンタルコントロールといったHomeShieldの全ての機能をフル活用するには、有料プランへの加入が必要となり、追加のランニングコストが発生する可能性があります。
- Wi-Fi 7対応クライアントがまだ少ない: MLOなどのWi-Fi 7の恩恵を最大限に享受するには、接続するスマートフォンやPCなどのクライアントデバイス側もWi-Fi 7に対応している必要がありますが、現時点では対応デバイスはまだ限定的です。これは一時的な問題であり、技術の普及とともに解消されますが、現時点ではデメリットと感じるユーザーもいるでしょう。
これらのメリットとデメリットは、ユーザーの視点や利用目的によってその重要度が変わることに注意が必要です。例えば、「簡単なセットアップとアプリ」は初心者にとっては大きなメリットですが、詳細なカスタマイズを求めるパワーユーザーにとっては「詳細設定の限界」としてデメリットに映るかもしれません。
価格とコストパフォーマンス:Deco BE9300 (Deco BE65) はお買い得か?
TP-Link Deco BE9300 (Deco BE65) の導入を検討する上で、最も気になる要素の一つが価格でしょう。最新技術を満載したハイエンドモデルだけに、ある程度の出費は覚悟する必要があります。ここでは、日本国内での販売価格帯と、その価格に見合う価値があるのか、コストパフォーマンスについて考察します。
日本国内での販売価格帯(2024年5月時点の調査に基づく目安)
TP-Link Deco BE9300 (Deco BE65) は、主に1パックモデルと2パックモデルが販売されています。本記事で主対象としている4つの2.5Gbpsポートを搭載した「Deco BE9300」と、ポート構成が異なる「Deco BE65 Pro」(2つの5Gbpsポートと1つの2.5Gbpsポートを搭載)では、若干価格帯が異なる場合があります。
- Deco BE9300 (4x 2.5Gbpsポートモデル):
- 1パック:おおよそ 29,800円~34,000円程度
- 2パック:おおよそ 53,800円~62,000円程度
- Deco BE65 Pro (2x 5Gbps + 1x 2.5Gbpsポートモデル):
- 1パック:おおよそ 29,000円~30,000円程度
- 2パック:おおよそ 55,000円~56,000円程度
これらの価格は、Amazon、楽天市場、ヨドバシカメラ、ビックカメラなどの主要な販売チャネルにおける実売価格を参考にしています。時期やキャンペーンによって変動する可能性があるため、購入時には最新の価格を確認してください。
コストパフォーマンスの評価
Deco BE9300 (Deco BE65) の価格が、その性能や機能に見合うものかどうかを評価してみましょう。
まず、最新のWi-Fi 7規格に対応し、MLO、320MHzチャネル幅、4K-QAMといった最先端技術を搭載している点は、高い付加価値と言えます。これにより、従来のWi-Fiルーターでは得られなかった高速かつ安定した通信体験が期待できます。
さらに、全ポート2.5Gbps対応(Deco BE9300モデルの場合)は、将来的なインターネット回線の高速化や、家庭内でのマルチギガビット環境構築を見据えた際に大きなメリットとなります。AIによるネットワーク最適化機能や、USB 3.0ポートによる簡易NAS機能も、利便性を高める要素です。
セキュリティ面では、HomeShieldの無料プランでも基本的な保護機能が提供され、日本国内では3年間の長期保証が付帯する点も安心材料です。
これらの要素を総合的に考慮すると、Deco BE9300 (Deco BE65) は、単に高価なだけでなく、その価格に見合うだけの先進性と実用性を備えていると言えるでしょう。特に、将来性を見据えたネットワーク投資として考えれば、十分に検討に値する製品です。
競合ハイエンド機種との比較(参考情報)
Wi-Fi 7対応のハイエンドメッシュシステム市場には、他にも強力な競合製品が存在します。Deco BE9300のコストパフォーマンスをより客観的に評価するために、代表的なモデルと比較してみましょう。
- Netgear Orbi 970シリーズ: クアッドバンド対応、最大27Gbpsという圧倒的なスペックを誇り、10GbEポートも搭載しています。しかし、価格も非常に高価で、3パックシステムで$1,999.99(約30万円以上) となっており、日本国内での販売価格はさらに高くなることが予想されます。また、セキュリティ機能「NETGEAR Armor」は初年度無料ですが、以降は年間$99.99程度のサブスクリプション費用が必要です。
- ASUS ZenWiFi BQ16 Pro: こちらもクアッドバンドBE30000クラスの高性能モデルで、デュアル10GbEポート、デュアル6GHzバンドといった特徴を持ちます。価格は2パックで$1,099.99(約17万円程度) と、Orbi 970よりは抑えられていますが、依然として高価です。ASUS独自のセキュリティ機能「AiProtection」が無料で提供される点は魅力です。日本国内でのZenWiFi BQ16 Proの正式な価格情報はまだ少ないか、非常に高価な輸入品が中心となっているようです。
これらの最上位フラッグシップ機と比較すると、Deco BE9300 (Deco BE65) は、BE9300クラスのスペックで、有線ポートも2.5Gbpsが中心という構成ですが、多くの一般家庭やスモールオフィスにとっては十分すぎるほどの高性能を備えています。そして何より、価格が競合の最上位モデルよりも現実的な範囲に収まっている可能性があります。この「手の届きやすいハイエンド」あるいは「準ハイエンド」としての位置づけが、Deco BE9300の市場における大きな強みとなり得るでしょう。
TP-Link Deco BE9300 vs 主要競合機種 スペック・価格比較 (簡易版)
項目 | TP-Link Deco BE9300 (BE65) | Netgear Orbi 970 (RBE973S) | ASUS ZenWiFi BQ16 Pro (2-Pack) |
Wi-Fi規格/速度 | Wi-Fi 7 / BE9300 (最大9.3Gbps) | Wi-Fi 7 / BE27000 (最大27Gbps) | Wi-Fi 7 / BE30000 (最大30Gbps) |
主要バンド | トライバンド (2.4/5/6GHz) | クアッドバンド (2.4/5L/5H/6GHz) | クアッドバンド (2.4/5/6L/6H GHz) |
WANポート | 2.5Gbps (LANと共用・自動認識) | 10Gbps | 10Gbps (LANと共用可能) |
LANポート | 2.5Gbps ×4 (WAN/LAN自動認識) | 10Gbps ×1, 2.5Gbps ×4 (ルーター本体) | 10Gbps ×1, 1Gbps ×3 (ルーター本体、ノードは構成異なる) |
セキュリティ | HomeShield (Basic無料, Pro有料) | NETGEAR Armor (初年度無料, 以降有料) | AiProtection Pro (無料) |
実売価格帯(目安) | 2パック 約5.4万円~ | 3パック 約30万円~ (米ドル価格より換算) | 2パック 約17万円~ (米ドル価格より換算) |
この比較表からも、Deco BE9300が、ポート構成のバランスの良さと、比較的現実的な価格帯でWi-Fi 7の主要なメリットを提供しようとしていることが伺えます。
ただし、ルーターの価格を評価する際には、本体価格だけでなく、HomeShieldのようなセキュリティ機能の有料プランを含めたTCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)で考える必要があります。ASUS AiProtectionのように無料で包括的なセキュリティ機能を提供している競合製品と比較する場合、この点は重要な判断材料となります。HomeShieldの有料プランが自身の利用スタイルに必要かどうかを検討し、長期的な視点でのコストも考慮に入れることが賢明です。
【結論】TP-Link Deco BE9300 (Deco BE65) はこんな人におすすめ!
さて、ここまでTP-Link Deco BE9300 (Deco BE65) の詳細なレビューをお届けしてきました。最新のWi-Fi 7技術、強力なハードウェア、そして使いやすいアプリと、魅力的な要素が詰まった製品であることは間違いありません。では、最終的にどのようなユーザーにこのDeco BE9300 (Deco BE65) は「買い」なのでしょうか?

購入を推奨するユーザー層
- 最新技術をいち早く体験したいアーリーアダプター: Wi-Fi 7がもたらす圧倒的な通信速度、低遅延、安定性を誰よりも早く手に入れたい、技術的好奇心旺盛な方。
- オンラインゲーマー: 一瞬のラグも許されないシビアなオンラインゲームにおいて、有線接続に匹敵するほどの低遅延と安定した接続環境を無線で実現したい方。QoS機能と組み合わせることで、最高のゲーミング体験を追求できます。
- 4K/8K動画のヘビーユーザー、大容量ファイルを取り扱うクリエイター: 高精細な動画コンテンツのストリーミングや、テラバイト級のデータ転送を日常的に行う方。Wi-Fi 7の高スループットが、作業効率の大幅な向上や快適なエンタメ体験をもたらします。
- 広い一戸建てや複雑な間取りの家に住む人: これまでWi-Fiの電波が届きにくかった部屋やデッドゾーンに悩まされてきた方。Deco BE9300の強力なメッシュWi-Fi機能が、家の隅々まで安定した高速通信エリアを構築します。
- 多数のスマートデバイスを所有するスマートホーム実践者: スマートスピーカー、照明、エアコン、セキュリティカメラなど、多数のIoTデバイスを同時接続し、安定して運用したい方。Wi-Fi 7とAIメッシュが、多数同時接続環境でも信頼性の高いネットワークを提供します。
- 将来のインターネット高速化やデバイス進化を見据えて投資したい人: 全ポート2.5Gbps対応やWi-Fi 7といったスペックは、今後数年間のネットワーク環境の変化にも十分対応できる将来性を持っています。長く使える高性能ルーターを求めている方。
購入を検討しても良いユーザー層(ただし注意点あり)
- 予算に限りがあるが、Wi-Fi 7を試したい人: Netgear Orbi 970やASUS ZenWiFi BQ16 Proといった最上位フラッグシップ機と比較すると、Deco BE9300は(特にBE9300スペックのモデルは)比較的手頃な価格でWi-Fi 7の主要なメリットを享受できる可能性があります。
- 設定の簡単さを重視するIT初心者: Decoアプリによるセットアップは非常に簡単ですが、万が一、環境依存のトラブルが発生した場合、ある程度のネットワーク知識やトラブルシューティング能力が求められる可能性も考慮しておきましょう。
購入を見送った方が良いかもしれないユーザー層
- インターネット利用がメールやウェブ閲覧程度で、現状のWi-Fi環境に大きな不満がない人: Wi-Fi 7の性能はオーバースペックとなる可能性が高く、コストに見合うメリットを体感しにくいかもしれません。
- 予算を最優先し、より安価なWi-Fi 6/6Eルーターで十分な人: 現状の利用スタイルであれば、より安価なWi-Fi 6やWi-Fi 6E対応ルーターでも十分な性能が得られる場合があります。
- 非常に詳細なネットワーク設定(チャンネル固定、詳細なルーティング設定など)を自分で行いたいパワーユーザー: Decoアプリは使いやすさを重視しているため、一部の高度な設定項目は提供されていない可能性があります。
Deco BE9300のような高性能メッシュWi-Fiは、「万人向け」の製品ではなく、特定のニーズや課題を持つユーザー層に対して大きな価値を提供する製品です。ご自身の利用状況や求める性能、予算などを総合的に考慮し、最適な選択をしてください。
一言
- クライアントデバイスの状況を確認: Wi-Fi 7の全ての恩恵を受けるには、スマートフォンやPCなどのクライアントデバイスもWi-Fi 7に対応している必要があります。現時点での対応状況を踏まえ、焦らずご自身の利用状況と照らし合わせて検討することが重要です。
- ファームウェアアップデートに注目: 新技術を搭載した製品は、発売後のファームウェアアップデートによって性能が向上したり、安定性が改善されたりすることがよくあります。TP-Linkの公式サイトなどで、最新のファームウェア情報を定期的にチェックすることをおすすめします。
- 設置場所とバックホール: Decoユニットの性能を最大限に引き出すためには、適切な設置場所の選定が重要です。また、可能であればユニット間を有線LANで接続する「有線バックホール」を活用することで、より安定した高速なメッシュネットワークを構築できます。
購入後の満足度を高めるためには、製品の能力だけでなく、ユーザー自身のITリテラシーや利用環境(契約しているインターネット回線、家の構造など)とのマッチングも非常に重要です。例えば、どんなに高性能なルーターを導入しても、契約しているインターネット回線自体が低速であれば、ルーターの性能を十分に活かすことはできません。
