Xが提供してきたクリエイター向けの収益化プログラム「クリエイター収益分配(Creator Revenue Sharing)」が、2026年9月7日分の収益発生をもって終了することになった。
8月14日と8月28日に通常どおりの支払いが行われたあと、9月7日までに発生した収益分の最終支払いが9月11日ごろに実施される見込みだ。
これと入れ替わる形で、8月7日から新プログラム「オリジナルコンテンツ報酬プログラム(Original Content Rewards Program)」がスタートしている。現行プログラムの参加者は9月8日から新プログラムへの申請が可能になり、審査を通過した場合の初回支払いは9月25日に予定されている。
新制度では、他人の投稿をコピーしただけのアカウントではなく、独自の視点や創造性を伴うコンテンツを投稿するクリエイターに報酬が優先的に配分される仕組みへと変わる点が最大のポイントだ。
クリエイター収益分配プログラムとは、これまでの仕組みをおさらい
Xのクリエイター収益分配プログラムは、日本国内では2023年から導入された制度だ。
当初はリプライ欄に表示される広告収益の一部をクリエイターに配分する形式だったが、2024年以降は認証済みバッジを持つXプレミアム加入者からのエンゲージメント(インプレッションや反応)に基づいて報酬が支払われる方式に切り替わっている。
この制度によって、多くのクリエイターが投稿活動を収益化できるようになった一方で、想定外の副作用も生まれた。いわゆる「インプレゾンビ」と呼ばれるアカウント群が急増し、他人の投稿をそのままコピーしたり、話題になっている投稿に内容の薄いリプライを大量に送りつけたりする行為が横行するようになったのだ。こうした行為はインプレッション数を稼ぐことだけを目的にしており、タイムラインの情報の質を下げる要因として長らく問題視されてきた。
なぜ収益分配プログラムは終了するのか、背景にある課題
インプレゾンビ問題は、Xの運営側にとっても看過できない課題になっていたようだ。
プラットフォーム上に低品質なコンテンツが増えれば、ユーザー体験の悪化やプラットフォーム全体の信頼性低下につながりかねない。
実際、Xは2026年5月にもパクツイで稼ぐ大規模アカウントに対する収益削減の取り締まりを強化するなど、段階的に対策を進めてきた経緯がある。
今回発表された制度変更は、こうした一連の取り組みの延長線上にあるとみられる。エンゲージメント量だけを評価基準にするのではなく、コンテンツそのものの独自性や創造性を重視する仕組みに切り替えることで、コピー投稿や低品質な反応を目的とした収益狙いの行動を抑制したい狙いがうかがえる。
終了までの具体的なスケジュールを整理
現行の収益分配プログラムが完全に終了するまでのスケジュールは、以下のように段階的に進んでいく。
- 8月14日:通常スケジュールに沿った支払いが実施される。まだ移行期間中であり、対象者はこれまでと同様に収益を受け取ることができる。
- 8月28日:2回目の通常支払いが行われる。この時点でも収益分配プログラムそのものはまだ稼働している。
- 9月7日:収益分配プログラムによる収益発生の最終日となる。この日以降、同プログラムを通じた新たな収益は発生しなくなる。
- 9月11日ごろ:9月7日までに発生した分の最終支払いが実施される予定だ。これをもって収益分配プログラムからの支払いはすべて完了する。
- 9月8日:既存の収益分配プログラム参加者を対象に、新しい「オリジナルコンテンツ報酬プログラム」への申請受付が順次スタートする。
- 9月25日:新プログラムへの申請が承認された場合、初回の報酬支払いが行われる予定となっている。
このように、収益分配プログラムの終了と新プログラムへの移行期間が一部重なる設計になっており、対象クリエイターがいきなり収益を得られなくなるような事態は避けられるよう配慮されているようだ。
新プログラム「オリジナルコンテンツ報酬プログラム」の特徴
新たに始まった「オリジナルコンテンツ報酬プログラム」は、Xに独自のアイデアや専門知識、創造性をもたらすクリエイターに報いることを目的とした制度だと説明されている。
これまでの制度がインプレッション数という量的な指標を重視していたのに対し、新制度ではコンテンツの質、つまり「オリジナリティ」が評価の中心に据えられる点が大きな違いだ。
対象となるコンテンツの具体例としては、独自の文章や記事、報道、分析、自分自身で撮影した写真や動画、自らデザインしたイラストやミームといった創作物、既存の会話に意味のある視点を加えるコメントや洞察などが挙げられている。
一方で、他人の投稿をそのまま無断でコピーしたものや、トリミングや簡単なフィルター加工だけを加えて再アップロードした投稿、内容をただ説明しただけのキャプションを付けた投稿などは、オリジナルコンテンツとして認められない。
他人のコンテンツを扱う場合には、有意義な解説や背景情報、分析、独自のユーモアや編集といった付加価値を加えることが求められる。
報酬の算定基準となるのは「有効インプレッション」という指標だ。これは、ホームタイムラインのフィード上で投稿の50%以上が表示された状態で、プレミアムユーザーから記録されたユニークなインプレッションを指す。同一アカウントから同じ投稿に対して繰り返し発生したインプレッションや、購入・プロモーションによって人為的に生み出されたインプレッション、不正な手段で生成されたインプレッションはカウントされない仕組みになっている。
新プログラムへの参加条件は8項目
オリジナルコンテンツ報酬プログラムに参加するには、次の8つの条件をすべて満たす必要がある。
- 18歳以上であること。
- プログラムが利用可能な国や地域に居住していること。日本もこの対象国に含まれている。
- アカウントの状態が良好であり、Xの収益化基準や利用規約に繰り返し違反した履歴がないこと。
- 個人アカウントまたはビジネスアカウントを保有していること。
- Xプレミアム、プレミアムプラス、プレミアムビジネスのいずれかに加入していること。
- 認証済みバッジを持つユーザーからのフォロワーが500人以上いること。
- 過去90日間に、認証済みユーザーからのホームタイムラインインプレッションが50万回以上あること。なお、リプライ(返信)は集計対象に含まれない。
- 定期的にオリジナルコンテンツを投稿していること。
これらの条件を満たしているクリエイターは、Xアプリ内のメニューにある「クリエイタースタジオ」から「オリジナルコンテンツ報酬」の項目を選び、申請手続きを行うことができる。
申請後は3営業日以内に審査結果が通知される仕組みで、もし承認されなかった場合でも1回だけ異議申し立てが可能だ。異議申し立てが認められなかったとしても、条件を満たし続けていれば90日後に再申請できる。
対象となる国・地域について
オリジナルコンテンツ報酬プログラムは、アメリカやイギリス、日本、韓国、台湾、香港、シンガポール、オーストラリア、多くのヨーロッパ諸国など、100を超える国と地域で利用可能とされている。
日本のクリエイターも対象に含まれているため、条件を満たしていれば従来同様に収益化を継続できる見込みだ。ただし、居住国によっては対象外となるケースもあるため、詳細な対象国リストはXの公式ヘルプページで確認しておくと安心だろう。
今後の見通しとクリエイターが気をつけたいポイント
今回の制度変更によって、インプレゾンビと呼ばれる低品質な投稿による収益獲得が難しくなることが期待されている。これまで量を重視した投稿戦略を取っていたクリエイターにとっては、投稿の質や独自性を高める方向へ発想を切り替える必要が出てくるかもしれない。一方で、しっかりとオリジナルコンテンツを制作してきたクリエイターにとっては、これまで以上に正当な評価を受けやすくなる可能性がある。
現行プログラムに参加しているクリエイターは、9月7日までの収益発生期限と9月11日ごろの最終支払いのタイミングを見落とさないようにしたい。また、9月8日以降に新プログラムへの申請受付が始まった際には、参加条件を改めて確認し、早めに申請手続きを進めておくことをおすすめする。
制度の詳細や対象国リストは今後変更される可能性もあるため、最新情報はX公式のヘルプページやクリエイター向けアカウントの発表を随時チェックしておくとよいだろう。
