蛍光灯2027年問題とは?「使えなくなる」ではなく「作れなくなる」
家電量販店の照明売り場で「蛍光灯が2027年から使えなくなる!?」というPOPを見かけた人もいるかもしれません。結論から言えば、2027年に蛍光灯が使用禁止になるわけではありません。禁止されるのは製造と輸出入です。手元にある蛍光灯を使い続けることも、店頭の在庫を買うことも、規制が始まったあとで問題はありません。経済産業省もFAQで「今お使いの蛍光灯を使用し続けることや、販売されている蛍光灯を購入することに制限はございません」と明記しています。
とはいえ、新しく作られなくなれば、いずれ店頭から消えます。切れたときに同じランプが手に入らない。これが2027年問題の実体です。
きっかけは2023年10月30日から11月3日にかけてスイス・ジュネーブで開かれた「水銀に関する水俣条約 第5回締約国会議(COP5)」。ここで、一般照明用の蛍光ランプの製造と輸出入を、種類に応じて2026年末または2027年末までに段階的に廃止することが合意されました。日本国内でも2024年12月、水銀による環境の汚染の防止に関する法律(水銀汚染防止法)の施行令改正が閣議決定され、国内ルールとして固まっています。
蛍光灯には微量の水銀が封入されています。水銀は毒性が高く、水俣病の原因物質として知られる存在です。水俣病を経験した日本は、この条約で世界の水銀対策をリードする立場にあります。条約の名前に「水俣」が入っている以上、日本が自国の蛍光灯だけ例外にするという選択肢は、そもそも取りにくかったわけです。
なお、使用中の蛍光灯から水銀が漏れる心配については、環境省・経済産業省ともに「破損等がなければ外部に漏れ出ることはなく、健康上のリスクもありません」と説明しています。慌てて外す必要はありません。
いつまで買える?種類別の禁止スケジュール
ややこしいのは、蛍光灯の種類ごとに期限が違う点です。環境省の資料をもとに整理すると、次のようになります。
| ランプの種類 | 製造・輸出入が禁止になる日 |
|---|---|
| 電球形蛍光ランプ(30W以下) | 2026年1月1日から |
| 電球形蛍光ランプ(30W超) | 2027年1月1日から |
| コンパクト形蛍光ランプ | 2027年1月1日から |
| 直管形・環形(ハロりん酸塩系) | 2027年1月1日から |
| 直管形・環形(三波長系) | 2028年1月1日から |
つまり2026年9月現在、電球形蛍光ランプの製造はすでに止まっています。直管形と環形については、一般タイプの「ハロりん酸塩系」が今年いっぱい、高効率な「三波長系」が2027年いっぱいという二段構え。どちらのタイプかは、ランプに「3波長形」または「EX」の表示があるかどうかで見分けられます。表示がなければハロりん酸塩系です。
そもそも自宅の照明が蛍光灯かどうか分からない、という声も少なくありません。判別はさほど難しくありません。品番が「F」で始まれば蛍光ランプ、「EF」で始まれば電球形蛍光ランプであることが多い、というのが環境省とメーカー共通の案内です。光源が細長いチューブ状なら蛍光灯の可能性が高く、粒状の光源が並んでいればすでにLEDと考えてよいでしょう。
ちなみに、すべての蛍光灯が対象というわけでもありません。規制がかかるのは「一般照明用」。非常灯や誘導灯、殺菌灯、美術館などで使う高演色タイプ、低温用、医療機器用といった特殊用途のランプは対象外です。この線引きは日本照明工業会が用途別に整理しています。
メーカーの生産終了は、法律の期限より早い
ここが見落とされがちな点です。法律上の禁止日より前に、メーカーは製造をやめます。
パナソニックは、直管・丸形蛍光ランプなどを2027年9月末、ツイン蛍光ランプ(コンパクト形)を2026年9月末に生産終了すると公表済み。ハロりん酸塩系の直管は2025年6月末で、電球形蛍光ランプはすでに生産を終えています。東芝ライテックも2024年11月の告知で、すべての蛍光ランプと電子点灯管の全131機種を2027年9月末までに生産終了し、以降は在庫限りとしました。ホタルクス(旧NECライティング)は、ハロ蛍光体の直管を2026年12月、三波長形の直管と丸管を2027年12月に終えると案内しています。三菱電機は既存光源の器具・ランプの販売をすでに終了しました。
東芝ライテックとホタルクスはいずれも「環境の変化によっては前倒しになる場合がある」旨を付記しています。カレンダー上の期限まで在庫が潤沢にある、と考えないほうが現実的でしょう。
「じゃあ買いだめしておこう」と考える人は当然います。法律上、買いだめは自由です。ただし照明器具そのものに寿命があるため、ランプを箱買いしても器具側が先に力尽きる可能性があります。この点は後述します。
認知は広がった。でも、行動はまだ追いついていない
日本照明工業会は半年ごとに1万人規模のインターネット調査を実施しています。蛍光ランプ製造終了の認知度は、2024年2月時点でわずか13.6%。それが2025年8月に40.8%、2026年2月には42.4%まで上がりました。テレビCMや自治体の広報が効いているのでしょう。
パナソニックが2026年3月27日から31日にかけて全国の20〜70代7,780人に行った調査では、認知率は63.5%と、より高い数字が出ています。興味深いのはその先です。製造中止を知ったあと「すぐにLEDに交換した」人は7.2%にとどまり、45.7%が「特に何も思わなかった、行動しなかった」と答えました。約3人に1人は製造終了後も蛍光灯を使い続けたいと回答し、その理由の半数以上が「今の蛍光灯がまだ使えるから」。
部屋別のLED化率も出ています。リビングは51.5%まで進んでいる一方、浴室は32%、キッチンの流し元は23.9%。人が長く過ごす部屋から交換が進み、水まわりや廊下といった「脇役の照明」が後回しになっている構図が見えます。
国全体で見ると、日本照明工業会の推計で国内の照明器具ストックは約18.1億台。そのうちLED化されているのは2025年9月時点で65.3%で、残る約6.3億台は蛍光灯や白熱電球のままです。NITE(製品評価技術基盤機構)は2025年末時点のLED化率を66.4%としています。3分の1がまだ入れ替わっていない、という規模感です。
交換の落とし穴「ランプだけLEDに差し替え」が危ない理由
ここからが、この記事でいちばん伝えたい部分かもしれません。
蛍光灯をLEDにする方法は大きく二つ。器具ごと交換するか、ランプだけをLEDに差し替えるか。安く済むのは後者ですが、事故が起きているのも後者です。
理由は電源回路の位置にあります。LED電球や電球形蛍光ランプは、点灯に必要な回路がランプ自体に内蔵されています。だからソケットにねじ込むだけで完結する。ところが蛍光灯器具は「安定器」と呼ばれる電源部分が器具本体側にあり、これは蛍光ランプを光らせるために設計されたものです。そこへ想定外のLEDランプを取り付ければ、正常に点灯しないばかりか、異常発熱から発煙・発火に至ることがあります。
NITEに通知された事故として、次のような例が公開されています。2021年、滋賀県でグロースターター式の器具に直管LEDランプを装着した際、グローランプを外さなかったため異常発熱しランプが焼損。同じく2021年、神奈川県ではラピッドスタート式の器具に直管LEDを取り付けたものの必要な改造工事をしておらず、安定器の異常発熱で火災が発生しました。パナソニックの資料によれば、不適切な取り付けによる事故は2014年から2023年までに12件確認されています(2024年9月集計時点)。設置直後ではなく数年後に発火した事例もある、という点も見逃せません。
さらにNITEは2026年3月26日、「見た目はピカピカ、中身は劣化」と題した注意喚起を出しました。ランプだけ替えても古い器具を使い続けることになり、外観に異常がなくても内部の電気部品が劣化して発煙・発火につながるおそれがある、という内容です。『LEDランプに交換すれば、ずっと使える』は間違いです──と、はっきり書かれています。なお同資料には2026年6月付の補足があり、いわゆるバイパス工事で配線を切断した安定器から発火するおそれはない、とも説明されています。
照明器具の寿命については、日本照明工業会がJIS C 8105-1の解説に基づき、設置から10年を「適正交換時期」、15年を「耐用の限度」としています。10年を過ぎると故障率が増え始める。にもかかわらず、前出のパナソニック調査では、この発火リスクを「聞いたことがない、初めて知った」と答えた人が59.5%にのぼりました。
ランプ交換を否定するつもりはありません。ただ、自宅の器具が何年ものかは、一度確認しておく価値があります。製造年は器具の銘板(ラベル)に書かれています。記載がなければ、かなり古い器具である公算が大きいでしょう。
LED化にいくらかかる?費用の目安と補助金
価格.comマガジンが整理している費用相場は、器具ごと交換が1灯あたりおよそ1万〜2万5千円、バイパス工事が3千〜1万円程度、工事不要をうたう直管LEDランプへの差し替えが1本1,500〜5,000円程度。灯数や設置環境で上下します。
天井に引掛シーリング(丸い円盤状の配線器具)が付いていれば、シーリングライトやペンダントライトは自分でも交換できます。配線を直結するタイプや、バイパス工事を伴う場合は電気工事士の資格が必要で、DIYは不可です。
かかるお金の話ばかりでは気が滅入るので、戻ってくる分にも触れておきます。日本照明工業会の試算では、蛍光灯シーリングライトをLEDシーリングライトに替えると年間およそ2,000円の電気代節約になります。業務用ではもっと差が開き、アイリスオーヤマの例では40W形ラピッドスタート式(42W)から同社の直管LED(10W)への切り替えで最大約76%の消費電力削減。資源エネルギー庁の資料では、一般的なオフィスビルの電力消費の24%を照明が占めています。寿命の差も大きく、蛍光灯が6,000〜12,000時間程度なのに対し、LEDはおよそ40,000時間とされます。
補助金は、家庭向けと事業者向けで景色が違います。家庭で使いやすいのは自治体の制度です。東京都の「東京ゼロエミポイント」では、住宅の屋内に固定して使うLED照明器具への買い替えに対し、購入のみで4,000円、取替作業費が発生する場合は6,000円が店頭で直接値引きされます。対象期間は2027年3月31日まで。申請は登録済みの販売店が行う仕組みで、個人からの申請はできません。事業者向けでは、たとえば横浜市の中小企業向けLED化支援助成金がベースライト1台12,000円、高天井照明1台35,000円、その他(ダウンライト、シーリングライト等)1台10,000円といった単価を設定しています。
制度は自治体ごとに内容も期間も異なり、多くは工事前の申請が条件です。予算枠に達すれば受付終了になります。動く前に、お住まいの自治体サイトで「LED 補助金」と検索してみてください。
賃貸住宅ではどうなる?
賃貸の場合、費用を誰が持つのかが気になるところでしょう。一般的な整理としては、備え付け照明のランプ交換は消耗品扱いで入居者負担、照明器具本体の故障や寿命による交換はオーナー負担とされます。では、ランプが製造終了で手に入らなくなったら──ここは契約書に書かれていないことがほとんどです。器具ごとLEDに交換する対応が必要になるため、オーナー側の負担となる可能性があります。
入居者としては、自己判断で工事を手配しないことが肝心です。古い器具にLEDランプを差し替えるだけでも火災リスクがあり、原状回復をめぐるトラブルにもなりかねません。まず管理会社かオーナーへ相談する。この順番を守るだけで、面倒の大半は避けられます。
オーナー側は逆に、先手を打つほうが安く済みます。物件内の蛍光灯器具の台数と場所を洗い出し、まとめて発注すれば1灯あたりの単価は下がります。優先度が高いのは、切れたときに影響の大きい共用部(廊下、エントランス、駐車場)と、築年数が古い器具です。
職人の手が足りなくなる、という別の期限
見落とされがちなのが、工事を担う人の数です。
全国の自治体が公共施設のLED化を急いでいます。静岡県沼津市は、公共施設に残る蛍光灯を迅速に取り換えるため、地元企業のノウハウを活用する官民連携手法を導入しました。同様の動きは各地で進んでおり、大型案件で電気工事会社の日程が埋まれば、小さな店舗や個人宅の工事は後回しになりかねません。実際、事業者からは、オフィスや学校で使われるLEDベースライトについて注文から入荷まで数か月待ちが生じているという報告も出ています。
パナソニックも「2027年末は、好みのLED照明器具が手に入りにくくなる可能性や、交換に電気工事が必要な場合は依頼が混み合う可能性がある」として、早めの交換を呼びかけています。期限に向かって混雑するのは、確定申告でも引っ越しでも同じ。照明だけが例外ということはないでしょう。
蛍光灯が日本で初めて灯った日
最後に、少し寄り道を。
日本で蛍光灯が初めて実用化された日は、記録に残っています。1940年8月27日。場所は法隆寺金堂でした。紀元2600年記念事業として金堂壁画の模写が行われることになり、画家の和田英作らが「熱がなく明るい照明」を探していたところ、東京芝浦電気(現・東芝)が開発中だった蛍光ランプが採用されたのです。試作品の20W昼光色蛍光灯136灯が、千数百年前の壁画を照らしました。翌1941年には「マツダ蛍光ランプ」として15Wと20Wが正式に発売されています。
日本照明工業会は、照明の歴史をおよそ60年周期で捉えています。1810年代のガス灯、1879年の白熱電球、1938年の蛍光ランプ、1996年の照明用LED。等間隔に並ぶこの年表を見ると、蛍光灯が退場するのは自然な世代交代にも思えてきます。
もうひとつ。1995年、阪神・淡路大震災を契機に生まれた残光形蛍光ランプ「ホタルック」をご記憶でしょうか。スイッチを切ったあともしばらくぼんやり光り、暗闇での安全を支えたあのランプは、累計1億本を超えるロングセラーになりました。製造元のホタルクスは、生産終了の告知文でこの製品の歴史に触れています。後継となるLEDシーリングには、同じホタルック機能を備えたモデルが用意されているそうです。
灯りが消えるのではなく、灯し方が変わる。そう考えると、天井を見上げる気分も少し変わるかもしれません。
今日から始める3ステップ
難しく考える必要はありません。最初にやるべきは、家じゅうの照明を見て回ることです。キッチン、洗面所、浴室、廊下、玄関。カバーを外して品番を確認し、「F」で始まっていれば蛍光灯です。
次に、器具の銘板で製造年を確認します。10年を超えているなら、ランプだけの交換ではなく器具ごとの交換を検討する段階に入っています。
そして、自治体の補助金を調べたうえで、交換の順番を決める。全部いっぺんに替える必要はありません。毎日長時間つける場所、切れたら生活に支障が出る場所から手を付ければ、負担は分散できます。
蛍光灯が突然消えるわけではない。けれど、いつか切れる日は必ず来る。その日が来る前に手を打つか、暗い部屋で業者の順番待ちをするか。選べるうちに選んでおきたいところです。
主な参照先
環境省「一般照明用の蛍光ランプの規制について」/経済産業省「蛍光灯からLED照明への切り替えはお済みですか?」/日本照明工業会(LED照明ナビ、認知度調査、Q&A)/NITE 2026年3月26日プレスリリース/パナソニック、東芝ライテック、ホタルクス各社の生産終了告知および意識調査/東京ゼロエミポイント公式サイト/横浜市/価格.comマガジン
※規制スケジュールや補助金の内容は変更される場合があります。掲載は2026年9月時点の情報です。実際の手続き前に、各公式サイトで最新情報をご確認ください。

