
人気作家あきのこ先生による繊細な恋愛模様を描いた『となりの猫と恋知らず』の最新刊、第5巻の電子書籍版を購入しました。
自分の感情がまだわからない、もどかしい「恋知らず」の主人公が、今回どのような心の「歩み」を見せるのかレビューしていきます。
あらすじ
『となりの猫と恋知らず』第5巻は、「23歩目」から始まり、「27歩目」で幕を閉じます。本巻では、計5話分の物語が収録されており、さらにファンには嬉しい「描き下ろし」のページも楽しむことができます。
物語の中で、主要な登場人物の一人は、「瀬野くん」の存在が引き起こす、複雑な感情に直面しています。彼女にとって、瀬野くんと一緒にいることは、決して穏やかなだけではありません。
彼女の独白によると、瀬野くんがそばにいると「変な感じ」がする。その感覚は、「くすぐったくてそわそわ」とした、定義しがたい落ち着きのなさとなって表れています。そしてさらに、その感情の複雑さゆえに、思わずその場から「逃げたくなる」衝動に駆られるほどです。

最も印象的なのは、彼女がこの感情の正体を「自分でもわからないの」と認めている点です。第5巻は、まさにこの「わからない」感情—それはおそらく恋の萌芽—が、瀬野くんとの関係の中で具体的にどのように彼女を揺さぶり、成長を促していくのかに焦点を当てています。
感想レビュー:生々しい心の葛藤と「歩み」の意義

この作品の魅力は、まだ形にならない恋愛感情の、生々しいリアリティを描き切っている点にあります。
特に、「変な感じがして…くすぐったくてそわそわして、逃げたくなる…」という一連の心理描写は、読者自身の初恋の記憶や、感情が制御できなくなる瞬間の戸惑いを呼び起こさせます。瀬野くんに対する感情は、純粋な好意だけでなく、自己の内面を乱す抗いがたい力として描かれており、これによりキャラクターの深みが増しています。

「くすぐったい」という感覚は幸福感や期待感を示唆しつつも、「そわそわ」や「逃げたい」というネガティブな衝動が同時に発生することで、彼女の心の防御壁と、新しい感情を受け入れることへの怖れが見て取れます。
この漫画のチャプターが「〇〇歩目」と名付けられていること は、単なる話数以上の意味を持っています。恋愛における戸惑いとは、まさに一歩一歩、手探りで進んでいくプロセスです。第5巻は、瀬野くんを巡る複雑な感情を抱えながら、主人公が自己理解へと向かうための重要な「歩み」の記録となるでしょう。

自分の感情が「自分でもわからない」というヒロインの心情を丁寧に追いたい読者、そして甘さだけでなく、心の痛みや葛藤も味わいたい読者にとって必読です。

ぜひこの「恋知らず」な物語の行方を見届けてください。






